静的光散乱
静的光散乱を利用してタンパク質の凝集やキャプシド含有率などの粒子特性を測定します
光で多くのデータを把握する
静的光散乱(SLS)法は、レーザーがサンプルに照射し、粒子に当たって跳ね返るという、一見単純な手法に見えますが、実は溶液中の粒子を検出する最も強力な手法の1つです。反射光の強度がSLS実験の主に出てくる値で、サンプルの予測値がわかっていれば、その強度で多くのことがわかります。SLSは、ウイルス粒子の濃度を計算したり、サンプル内で凝集が始まるタイミングをモニターする最も高感度な方法として使われています。
静的光散乱法は、光の力によってこれらすべてを実現することができます。
静的光散乱法の仕組み
SLSは、レーザー光をサンプルに照射し、散乱光をサンプル周辺の1つまたは複数の角度で測定します。散乱光の強度は、サンプルや設定で以下のような特性の影響を受けます。
- 粒子分子量
- 粒子径(Rg)
- 粒子濃度
- 粒子間の相互作用力
- 粒子と溶媒の屈折率
- レーザーと検出器の角度
- レーザー波長
測定された強度を使用して、サンプル中の粒子を特徴付けることができます。その仕組みは以下の通りです。
正しい光の利用
光の波長に対して比較的小さい粒子は、あらゆる方向に均等に光を散乱させます(レイリー散乱)。紫外線および可視レーザーには、タンパク質やAAVのようなバイオ医薬品は比較的小さな分子とされます。
強度の測定
散乱光の強度は、サンプル、光源、検出設定に関連する多くの要因に依存します。小さく希薄な粒子の場合、強度は以下の値に比例します。
- 粒子の分子量(M)
- 粒子濃度(C)
- バッファーの屈折率(no)
- 濃度に対する粒子の屈折率の差(dn/dc)2
凝集測定
静的光散乱法にサーマルランプを加えれば、凝集温度(Tagg)を測定することができます。それは、SLS強度が上昇し始め、凝集が一気に加速する温度です。
2つの手法の組み合わせ
例えば、SLSとDLSを同時に使えば、AAVキャプシドから直接強度を把握することができます。これが簡単で迅速なAAV濃度を得るための第一歩です。
静的光散乱と動的光散乱の違い
多くの実験装置には静的光散乱(SLS)と動的光散乱(DLS)のデータが一緒に提供されることが多いため、それぞれの技術の違いや適用範囲について疑問に思うかもしれません。
SLSは平均強度に関するもので、特定の設定で粒子の分子量と濃度を知ることができます。対照的に、DLSは散乱光強度が時間と共に変化する速度を読み取り、拡散速度や粒子径に関する情報を提供します。ロックのコンサートを聴くようなもので、SLSは音楽の音量を、DLSは演奏されている曲を教えてくれます。
そのため、SLSは分子量が増加する瞬間にその増加値を直接的に測定するため、凝集が始まる瞬間を検出するのに理想的です。対照的に、溶液中の粒子の拡散に基づいてサイズを調べるDLSは、動き回る粒子を検出するには少し時間がかかります。
しかしプラス面として、DLSはサンプルについて既知の情報が少ない場合に、より定量的です。そのため、日ごと、またはバッチごとのサイズを比較したり、長時間の等温実験で粒子サイズがどのように変化するかを測定したりするのに最適です。
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バイオ医薬品研究開発においては、弊社のSLSとDLS、蛍光、UV/Visを組み合わせた適切なツールを利用して、タンパク質の凝集とキャプシドの特性評価を把握することができます。ご不明な点やご要望などございましたらお気軽にお問い合わせください。